「がん体験者の悩みQ&A」では、2003年と2013年に実施した全国調査結果を整理して構築したがん体験者の悩みデータベースを公開しています。このデータベースに基づき、がん体験者の方々の悩みや負担をやわらげるための助言や日常生活上の工夫などの情報ツールの作成等を行っています。
なお、個別の回答やご相談は、仕組み上できかねますので、お困りごとやご相談がある方は、お近くの「がん相談支援センター」をご利用ください。

悩み

抗がん剤の副作用による味覚の変化や鈍さで、何を食べてもまずく、つらかった。
9 件の体験者の声があります。

助言

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【副作用による味覚変化で食べるのがつらいときの対応】

【味覚変化があるときのポイント】
食欲不振の原因の一つである味覚変化があるときのポイントとして
◎ 口の中を清潔な状態を保ち、保湿(口の中の乾燥を防ぐ)にも心がける
◎ 違和感のある味(まずい、金属のような味など)は避けて、いろいろな味付けを試してみる
◎ 自分にとって、他の食べ物よりは少し多く食べられる、少し食べやすいなど、比較的食べられる食べ物の味や特徴をチェックし、食事に積極的に取り入れてみる
◎ 口の中が乾燥しているときは、お茶や汁物等で口の中を潤したり、あんかけ料理にしてみたり、食べ物に水分を補ってみる
◎ 味を感じにくい場合は、味付けをはっきりさせてみる(だしをきかせる、ごま、ゆずなどの香織や酢を利用する)

【食欲不振があるときのポイント】
食欲不振に対する工夫のポイントとして
◎ 食欲不振の原因が明らかなときには、その原因を改善する工夫をする(例:吐き気、味覚の変化、気分の落ち込みなど)
◎ 気分のよい時に、食べられるものを食べる
◎ 抗がん薬治療(※1)に伴うからだの変化を知り、食事のとり方にメリハリをつける
※1 抗がん薬治療:がん薬物療法(細胞障害性抗がん薬、ホルモン療法薬、分子標的薬等を含んだ総称)の別の呼び方として使用しています。以降、抗がん薬治療とのみ表記します。なお、悩み文は、2003年、2013年の調査で患者さんが書かれた表記のままとしています。
◎ 口に合う、たんぱく質豊富な食品をさがす
◎ 栄養補助食品を利用する
などがあります。

【味覚変化の症状と原因 】
抗がん薬で起こる味覚の変化は、
◎ 舌にある味を感じる部分である味蕾(味細胞)のはたらきが低下する
◎ 末梢神経が傷つき、味を感じて脳に情報を伝達する神経が治療により影響を受け、<味覚中枢が信号を受信して感じられた味を判断する>という一連の流れがうまくいかない
などにより、起こります。
また、抗がん薬による口内炎(口の中の粘膜障害)、唾液の分泌が悪くなって起こる口の中の乾燥、心理的な要因などによっても起こります。

多くの場合、治療が終わって3-4週間程度で回復するといわれています。ただ、2-3ヶ月かかるという報告もあり、口の中の元々の状態、口内炎(口の中の粘膜障害)の有無、唾液分泌の有無や程度、抗がん薬の種類等によって影響を受けている可能性もあります。

抗がん薬に伴う味覚の変化は、「うま味」や「塩味」が感じにくくなる、「甘味」は強く感じるなどの症状があります。「酸味」の変化は少ないといわれています。

味覚変化で起こる症状には、下記のような症状などがあります。
◎ 自発性異常味覚
何も食べていないのに、いつも口の中で『苦い味』(あるいは、『渋味』など)がする自発性異常味覚が最も多くみられます。
例えば、「金属の味がする」、「苦く感じる」などです。
◎ 味覚の低下
抗がん薬の影響で、味覚を感じにくくなり、「特定の味がわからなくなる」、「何を食べても味がしない」、「砂をかんでいるみたい」などがあります。
◎ 味を強く感じる
「何でも甘く感じる」、「塩辛く感じる」などがあります。

【味覚変化があるときの食事の工夫】
味覚の変化といっても、いろいろなパターンがあるので、どのような変化なのか、あるいは同時に生じている食事に関連した症状(吐き気、口内炎など)などもあわせて、味の調整を検討してみましょう。

<工夫のポイント>
1.味覚の変化や症状に合わせて、味の調整をする
2.うがいをしたり、あめをなめたりする
味覚の変化の状況によって、工夫を変えてみましょう。

1. 味が濃すぎると感じる場合
◎ 強く感じる味の調味料や素材は使わずに、他の味付けをメインにして工夫する。
◎ 状態に合わせて、薄味かだしのみの調理にしてみる。
◎ 化学調味料(だし)を使用せず、天然のだしを利用する。
◎ 食べるときに味付けできるようにしてみる。
◎ 特定の味(苦味・甘味・塩味など)を強く感じる場合は、だし煮やスープ煮のような調理法を取り入れてみる。
◎ 食品そのものが障害となる味のあるもの(例えば、ハムやソーセージなど)で、苦味を強く感じたり、干物などの塩味を強く感じたりする時は、障害となる味のあるものは控える。あるいは、甘みを強く感じるときは、干し柿やジャムのようなものは控える。

2. 甘みに敏感になり、何でも甘く感じる場合
◎ 砂糖やみりんを料理には使用しないようにする。
◎ 塩、しょう油、みそなどを濃いめにしてみる。
◎ ゆずやレモン、酢などの酸味を利用してみる。

3. 味が本来の味と違って感じる場合(苦い、金属のような味など)
◎ 肉類の味に変化が起きて食べられなくなった場合には、別の食品でたんぱく質をとる。
例)チーズ、ヨーグルト、牛乳、アイスクリーム、ピーナッツバターなど
◎ 肉や魚は、あく抜きや臭み抜きをする。

4. 味が感じにくい場合
◎ 味付けをはっきりさせる。
◎ 香辛料や香味野菜を使う。
◎ 香りやうま味を利用して、風味や深みを加える。
◎ 料理の温度を人肌程度にしてみる。

例えば、「味がしない」、「味が薄すぎる」と感じる場合は、味のはっきりした料理にしましょう。
味付けがはっきりしている料理とは、味付けを濃くすることもそうですが、塩分を多くとったり砂糖を多く入れたりすることばかりを言うのではありません。味をはっきりさせる工夫を参考にしましょう。

◎ だしをきかせる
塩分を増やさずに、味をはっきりさせる工夫をしましょう。
削り節を煮出した後、しばらくおいて冷ますことで、だしがよく出ます。また、シチューにバターなどの乳製品を加えたり、煮物にみりんや酒を加えたりすることで味にコクが出ます。

◎ ごま、ゆずなどの香りや、酢を利用する
酢の物にレモン、かぼす、ゆずなどを添えると酸味がよく利くようになります。
焼き魚は、塩や酒で臭みを抜いて、味付けなしで焼き、レモンやかぼす等を添え、酸味を利用しましょう。また、アジを素焼きにして、レモンなどをしぼって食べてみましょう。しょう油をかける時は、なるべく少量にするよう心がけます。また、片栗粉をまぶして揚げてから酢じょうゆにつけ、南蛮風にしてみるのもよいでしょう。

◎ 食材のうまみをいかす
食材を増やすことで、具のうまみがたくさん出て味がはっきりします。
汁物を作る時は、みそやしょう油の量は普段通りで増やさずに、具をたくさんにする、具の種類を増やすなど工夫します。また、うま味を利用して、味を薄めにして、だしを濃くしてみましょう。

◎ 味にアクセントをつける
味の変化が少し分かる場合には、味に変化をつけたりアクセントになるものを添えたりすることが効果的です。
からしあえ、ごまあえ、梅肉あえ、しょうが焼き、セロリやクレソンのサラダ、カレー風味など、多少の香辛料や香味野菜を用いて味に変化をつけるとよいでしょう。また、漬物などを味のアクセントにそえることも効果的です。

◎ 少し低温の料理にする
できたての温かいものを食べるよりも、少し冷めた程度の料理を食べる方がおいしく感じることがあります。
肉じゃがやシチュー、茶わん蒸しなどは、冷ましてから食べてみましょう。

苦味、薬のような味、金属のような味など、本来と違う味を感じたり、嫌悪感を覚えたりする食品や調味料は控えましょう。
◎ 塩味を控えめにする。
◎ だしを利かせたり、ごまやゆずなどの香り、酢を利用したりしてみる。
◎ 化学調味料の味が気になることがあるので、控えめにする。

【味覚変化があるが、食事を作らなければいけないとき】
可能であれば、ご家族に食事作りを替わってもらう、ご家族に味見をしてもらうなどしましょう。
ただ、なかなかこれらの対応が難しいときもあります。そのときには、料理の本や、インターネット上のレシピ、テレビの料理番組のレシピなどをもとに、作り方、調味料など、そのままで作ってみましょう。
また、最近では、万能調味料など、ある程度、調味料を配合してある商品もあるので(ドレッシング、たれ、ソース、煮物の時の液体調味料、だしつゆなど)そのような調味料などを利用してみましょう。
ある程度、仕上げができてから、ご自分の分に関しては、小分けした上で、上記『味覚変化があるときの食事の工夫』などの工夫をして仕上げてみましょう。

【口の中をきれいにして、保湿する習慣を身につける】
口の中には、もともとたくさんの雑菌(細菌)が存在します。本来なら、唾液が自然と口の中をきれいにしてくれたり、歯磨きやうがいで口やのどをきれいにしたりしていますが、副作用で唾液の出が一時的に悪くなる場合もあります。

そこで、副作用で体調が悪いときも、できるだけ口の中のきれいにして、保湿することが重要です。そして、口の中をきれいに保つためには、以下のことを毎日続け、習慣化していくことが大切です。
 a)正しいブラッシングを覚え実行する
 b)歯間清掃を行う
 c)うがい
 d)保湿

1. 歯みがき
◎ ヘッドは小さなもの
◎ 毛の硬さ:通常はナイロン毛の『ふつう』の硬さの歯ブラシ
注)ただし、出血傾向、歯ぐきなどの痛み、骨髄抑制(白血球、赤血球、血小板などが低下しているとき)が強いときは、「軟毛」、「超軟毛」を使用
◎ 歯ブラシの交換:1カ月に1回程度
◎ みがき方:ペンを持つように歯ブラシをもち、歯と歯ぐきに対して、90度、あるいは45度くらいの角度であてて、歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目にあてて、軽い力で小刻みに動かす。
◎ 歯磨き回数:起床時、毎食後、寝る前
注)だるさが強いとき、吐き気があるときなどは、無理して、回数を守らなくてもかまいません。ただ、その場合でも、1日に少なくとも1回はきれいに磨くように努めましょう。

2. 歯間清掃
◎ 歯間をきれいにする際、歯間清掃用の歯間ブラシやフロスなどを使うと、歯と歯の間の歯垢(しこう)を取り除く効果が高くなる。
注)ただ、使い方に気をつけないと、歯ぐきを傷つけやすいので注意する。

3. 口の中の粘膜の清掃
◎ 口の中の粘膜をきれいにすることで、口の中の細菌数も減る。
◎ 粘膜清掃の道具:『軟毛の粘膜ブラシ』、『スポンジブラシ』など
◎ 歯磨き剤は、使用しない
◎ ブラシやスポンジに少量の水を含ませて、口の中の奥側から手前に動かしてきれいにする。
両側の頬の粘膜、舌の下側、舌など

4. 入れ歯の管理
◎ 入れ歯の表面は、入れ歯の材質や形などの関係で、細菌が付着しやすく、カビの一種(カンジダ)も増えやすい。そのため、入れ歯を汚れたまま使っていると、感染の危険性が高くなる。
◎ 毎食後、入れ歯を外し、入れ歯用のブラシを使い、流水で入れ歯についている食べ物かすや汚れなどをきれいに取り除いてから、『義歯洗浄剤』につけておく。

5. うがい
◎ 口の中をきれいにして、保湿も保つために、1日に4回以上、水、あるいは生理食塩水でのうがいを行う。
◎ 生理食塩水の作り方
(1) 準備するモノ:きれいに水洗いした500mlのペットボトル1本、食塩4.5g(小さじ1杯弱)、水500ml
(2) きれいに洗った500mlのペットボトルに、食塩小さじ一杯弱と水を容器の9割くらい(約500ml)まで入れる
(3) ふたをして、塩がとけるまでよく振る
(4) コップに小分けして、うがいに使用する
注)生理食塩水のうがい水は冷蔵庫で保存して、1日で使い切る

6. 保湿について
口の中が乾燥しないように『保湿』につとめることは、口内炎ができたり、悪化したりするのを防ぐための大切です。
市販の保湿剤には、マウスウォッシュタイプ、スプレータイプ、ジェルタイプがあり、多くのメーカーから多種多様な保湿剤が出ています。
頬の粘膜や舌のふちは、歯のとがった部分や歯並びの影響で頻回に接触して刺激を受けることで、よけいに障害を受けやすいので、予防的にジェルタイプの保湿剤などを塗りましょう。
また、就寝時にも口腔(こうくう)内が乾燥しないように、マスクをつけて寝るのもよいでしょう。

《参考文献》
(1) 静岡がんセンター. がん体験者の声Q&A 抗がん剤治療・放射線治療と食事編.2007(冊子)
(2) 監修 日本がん看護協会. 編集 狩野太郎、神田清子. がん治療と食事 治療中の食べるよろこびを支える援助. 医学書院. 2015(書籍)
(3) 岡田明子、他. 乳癌化学療法による味覚障害の実態調査. 外科 2017 ; 79 : 257-260
(4) 神田清子、他. 化学療法を受けた患者の味覚変化に関する研究. 日がん看会誌.1998 ; 12 : 3-10
(5) 石川徹 、他.アンケート調査による外来がん化学療法に伴う味覚異常の発生に関する検討. 癌と化学療法. 2013; 40: 1049-1054
(6) 市川度 編著. がん薬物療法の副作用ケア とことん攻略本. メディカ出版. 2016
(7) 日本がん口腔支持療法学会/ 日本がんサポーティブケア学会.がん治療に伴う粘膜障害マネジメントの手引き 2020年版. 2020.金原出版

(最終更新日:2020年6月22日)


 
参考になるホームページ
(1)がん体験者の声Q&A 抗がん剤治療・放射線治療と食事編(PDF版)
https://www.scchr.jp/book/yorozu/yorozu-qa3.html
抗がん剤治療や放射線治療によって起こる症状への対応を「食事」に焦点をあててまとめています。第一部は「料理の工夫」で、副作用症状別に適しているメニューやレシピ、症状別のワンポイントアドバイスを確認できます。また、メニューアレンジや便利メモなども紹介しています。第二部は「食生活の工夫」で、症状別に食生活や日常生活のなかでの工夫の情報を紹介しています。分冊もあります。
(2)SURVIVORSHIP.JP:抗がん剤・放射線治療と食事のくふう
https://survivorship.jp/meal/
『SURVIVORSHIP.JP』は、静岡がんセンターと大鵬薬品工業(株)との共同研究の成果による情報支援ツールの一つで、治療によって生じるつらさをやわらげるくふうなどの情報提供を行うサイトです。
『抗がん剤・放射線治療と食事のくふう』は、抗がん剤や放射線治療中の食事に役立つメニューやレシピを副作用症状に合わせて検索、閲覧できます。176品のレシピが掲載され、ジャンル別絞り込みでは、主食(米、パンなどの種類別)、主菜(肉、魚などの種類別)、副菜、汁物、デザートと飲み物などで絞り込みもできます。
(3)国立がん研究センター東病院「CHEER!(チアー)」
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/CHEER/about/index.html
国立がん研究センター東病院の栄養管理室が実施していた「柏の葉料理教室」(がん症状別料理教室)をもとに、症状別に作られたレシピ、症状別のアドバイス、調理のポイントなどの情報があります。
(4)静岡がんセンター 動画『口腔ケアの実際』
https://www.scchr.jp/video/contents/toubyou/h30_17.html
静岡がんセンターで実施している患者・家族集中勉強会での講義を動画で配信しています。歯磨きの仕方など、具体的な参考になります。

 

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