Menu

最初の治療

入院

Q.病院はベッド待ちですぐに手術できず、何でもいいから早く取ってほしかった。

入院を待っている間も治療に向けた計画は進んでいる
入院までの待機期間は、入院予約数や疾患、治療法などによっても異なってきます。
特に、がん専門病院や大学病院などの大きな病院は、同じような治療目的の患者さんが多く、入院待ちが長くなりがちです。
患者さんの多くは、「がんは進行する病気」という認識があるため、がんと告知されると、一日も早く治療を始めなければならないと追い込まれた気持ちになります。
しかし、実際には、急激に大きくなるがんもないことはないのですが、ほとんどのがんは、何年もの時間を経て大きくなっていると言えます。
入院までの期間には、治療の前段階として治療に必要な全身状態の検査などを進めています。ですから、入院を待っている間は何もしていないというわけでなく、治療に向けた計画がその間も進んでいるのです。
以前は、こうした検査もすべて入院してから行われていましたが、現在は入院期間が短縮され、治療直前に入院することが多くなりました。

治療入院の前の目標設定
入院前のこの期間、あなた自身にできることがあります。

■ 治療に向けて体調を整える
■ 入院している間の仕事や家事の調整をする
■ 病気や治療について、理解して納得できているか、自分自身に問いかけてみる

目標に大きい、小さいはありません。自分なりの具体的な目標を決めて、達成するために行動してみましょう。

たとえば、体調管理の具体的な目標としては、睡眠を十分にとる、栄養のバランスを考えて食事を摂る、体力維持のために毎日ウォーキングをするといったことが挙げられます。

近年、治療後早期から活動を再開する重要性については、かなり知られるようになりました。一方、診断時や治療前の活動については、制限がないにもかかわらず、心理的に、控える患者さんが多いという研究報告もあります。
入院中はどうしても活動量が低下しがちです。活動量が少ない状態が入院前から長く続くと、筋力の低下などの悪影響が生じやすくなると考えられるので、これまでの運動習慣を維持するように心がけましょう。運動の習慣がない方も、気分転換を兼ねて、からだを動かすとよいと思います。

病気や治療について理解することも不安を軽くする
手術を受ける前は、どのようなものかイメージがつかないため、いろいろと悪い方へ考えてしまいがちです。
ここで、自分の頭の中を再整理してみてください。あなたは、担当医から病気や手術についてどのような説明を受けましたか。一緒に説明を受けたご家族が近くにいらっしゃるのであれば、担当医の説明内容をお互いに確かめ合ってみるとよいでしょう。また、説明の際に書いてもらったメモや資料があれば、それを見ながら確かめ合うのもよいでしょう。
手術とはどのようなものなのか、合併症などの可能性はどうなのか、術後はどういう経過となるのか、など1つ1つ整理してみましょう。そして、よくわからないことがあれば、外来時に担当医に確認してみましょう。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.入院、治療(手術)することについて不安だった。

入院治療に関する気がかり
ここでは、一般的な(1)入院までの流れと準備、(2)入院費用、(3)手術の治療経過について説明します。
未知のことへの不安を軽くするためには、そのことに関する情報を得るとよいと思います。入院治療の流れをイメージしてみましょう。

(1)入院までの流れと準備
初めて入院される方は、入院までの大まかな流れを知っておくとよいでしょう。
まず、入院が決まると、入院予約の手続きをします。このとき、病室に関しては、差額ベッド代がかかる病室、差額ベッド代がかからない病室、どちらでもよいかなど希望を尋ねられます。差額ベッド代がかかる病室を選択する場合は差額ベッド代を確認しておきましょう。

入院時の持ち物については、説明時に渡される『入院案内』のパンフレットに書いてあります。治療ごとに必要な物品は、外来または入院初日に、看護師から説明があります。これらは、病院の売店で揃えることもできます。

(2)入院費用
診察、検査、処方、手術といった保険診療の単価は、診療報酬制度といって、全国共通の基準が設けられています。病院の機能、規模や職員の配置等によって、入院基本料は異なります。
保険の種類が3割負担の患者さんの場合、医療費の総額のうち3割が自己負担となります。これに、1食460円(2018年4月より)の食事代、差額ベッド代などを加えたものが入院費用の総額となります。

入院前に、ご自分の治療が全体としてだいたいどのくらいの医療費がかかるのか、医師あるいは会計事務に確認してみましょう。どのくらいお金を準備しておいたらよいか把握しておくことは、安心感にもつながります。

また、医療費による経済的な負担を軽くするための『高額療養費制度』という制度があります。『高額療養費制度』は、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が、月の初めから終わりまでの1ヶ月で一定の額(自己負担限度額)を超えた場合に、保険者に申請することで(多くの健康保険組合は、自動的に高額療養費が支給されます)、その超えた金額を支給する制度になります。
医療費は、年齢や収入に応じて1ヶ月に支払う自己負担限度額が定められています。
対象となるのは、公的医療保険が適用される医療費です。これには、病院や診療所の窓口で支払う保険診療の自己負担分のほか、医療機関で処方箋をもらって調剤薬局で購入する薬の代金も含まれます。医療保険が適用されない費用(差額ベッド代、食事代、診療所等の書類作成費用など)は、この制度の対象とはならないので、ご注意ください。

あらかじめ限度額適用認定証などの所得区分の『認定証』を保険者に申請しておき、医療機関の窓口で提示することで、入院診療・外来診療ともにあらかじめ支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。
70歳未満の方、70歳以上で所得区分が現役並みIか現役並みIIの方、住民税非課税世帯の方で、高額の支払いが見込まれる治療(入院・外来)を予定する場合には、事前に所得区分の『認定証』を自分が加入している保険者(保険証に記載のある)に申請し、入手しておきましょう。
なお、70歳以上で所得区分が、一般、現役並み所得IIIの方が治療する場合は、窓口での支払いが自動的に自己負担限度額までになるため手続きは不要です。

入院時の医療費の支払い方法ですが、請求通知を受け取ったら、支払い期限までの間に費用を準備し、会計窓口で支払います。退院のときには一般に、退院日に支払います。退院の数日前に、おおよその金額を確認することもできますので、病棟スタッフに確認をしてください。
最近では、クレジットカードで支払いのできる医療機関も増えつつありますので、各医療機関にお問い合わせください。
また、医療費の支払いに困ったときには、病院の相談室のソーシャルワーカーにご相談ください。

差額ベッド代とは
差額ベッド代は、正式には「特別療養環境室料」といいます。「特別療養環境室料」は、入院環境の快適さを高める目的で、個室など、少人数の病室を希望した場合に生じる費用のことです。
差額ベッド代がかかる病室は、厚生労働省が定めた一定の面積、設備(個人用の私物の収納設備、個人用の照明、小机等および椅子)、病床数(一室のベッド数)は4床以下(4人部屋以下)、病床ごとのプライバシーを図るための設備などの充足が求められています。
その他にも、差額ベッド代の徴収に関して、細かく決められています。たとえば、差額ベッド代がかかる病室に入院させ、患者さんに差額ベッド代を求めることができるのは、患者さん側の希望がある場合に限られ、患者さんに対して、十分な情報提供を行い、患者さんの自由な選択と同意に基づいて行われる必要があることなどの決め事があります。
通常入院する部屋代は、入院費に含まれ保険適用ですが、差額ベッド代は保険適用外です(高額療養費制度の支給対象になりません)。
病室のタイプや費用は、医療機関ごとに異なりますので、ご確認ください。

加入している民間保険があれば内容を確認
民間保険に加入している場合は、保険証書や問い合わせ窓口などを確認しておきましょう。治療方針が決まったら、保証内容、手続き方法などを保険担当者に問い合わせましょう。
契約されている保険によっては、診断書が不要な簡易請求(医療機関で発行される診療明細書や治療状況報告書で請求)が可能な場合や、他の生命保険会社に提出する診断書のコピーでの対応ができる場合がありますので、保険請求手続きをする前に確認をしましょう。

(3)手術の治療経過
一般に、手術の前日から数日前に入院します。担当医から、入院治療計画、手術の説明があります。担当看護師から、病棟環境や術前準備について、説明があります。また、手術前日は、麻酔科医師の診察や手術室看護師の訪問があります。
わからないこと、聞き忘れたことは、看護師に質問してください。

術後の回復
術後、からだには数本の管がついていることがあります。痛みが強いとき、気分が悪いときには、我慢せず、看護師に伝えてください。
術後早期に活動を再開することによって、合併症の予防や筋力の低下を防ぐことができます。
退院後の生活について、不明な点は、看護師にご相談ください。

(更新日:2022年10月25日)
 

Q.できるだけ入院はしたくなかった。毎日ぼうっと時が過ぎるという入院生活は私には苦痛だった。

入院環境と日課
入院中の日課は一般に、夕食が18時頃、消灯時刻が21時から22時と早いので、消灯後の時間が長いと思われるでしょう。
また、一日の大半を病室という限られた場所で過ごすため、日中の検査・治療以外の時間が手持ち無沙汰だと感じるかもしれません。
入院生活には、入浴や面会などの規則もあり、入院前の生活に比べて、単調な日課の繰り返しという印象があります。けれども、規則的な生活を送ることで、身体の安静を保ったり、心身のリズムを整えたりして、治療を効果的に行う目的もあるのです。
生活が単調と感じるのであれば、読書や好きな音楽を聴くなど、気分転換の時間を取り入れましょう。活動に制限がなければ、病室とは違う場所で過ごすとよいかもしれません。病室を不在にするときは、伝言かメモを残しておきましょう。

共同生活の長所と短所
大部屋に入院している患者さんのなかには、「同室の方に、いろいろ体験談を教えてもらい、心強かった」と言われる方もいます。同じように病気と向き合っている患者さんから貴重な情報を得て役立てたり、交流を楽しんだりしながら過ごす方も多いようです。
大部屋の場合、病気も同じではなく、いろいろな治療の段階の患者さんがいらっしゃいます。治療の様子を見聞きすることで、心構えができると同時に「将来、自分もそうなるのか」という不安を感じることもあるかもしれません。
ただ、患者さんの体は一人ひとり異なります。同じ治療をしても、この患者さんがこうなったから、自分も同じようになるとは限りません。
治療の副作用を最小限に、できるだけ快適な入院環境になるように、担当医、看護師ら病院スタッフがサポートします。
治療中は、体もこころも一定ではなく、揺れ動きます。治療前で神経質になっているとき、また“このつらさから抜け出すことができないのでは”と落ち込んでいるとき、同病者からの温かい言葉が、医療者やご家族の言葉以上に、自分にとって励みや希望になるかもしれません。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.介護が必要な家族がいるため、入院中は施設に預けなければいけないのだが、入院日の決定が間際なのでなかなか手続きができずに困った。

病院のソーシャルワーカーに相談する
病気を抱え、ご自分のことで精一杯の時に、介護を必要とするご家族に気を配るのは、本当に大変なことです。こういうときに、一人で悩みを解決しようとすると、焦りばかりが大きくなり、うまくいかないこともあります。自分だけの問題として抱え込まないで、ご家族や友人に協力してもらいながら情報を集めましょう。

ご家族の預け先について、まず相談していただきたいのは、おかかりの病院のソーシャルワーカーです。
ソーシャルワーカーは、子育てや介護に対する制度について、豊富な知識をもっています。あなたやご家族の希望や事情をよく考えた上で、制度利用の提案やこれからのことに関する助言をしてくれるでしょう。

また、ソーシャルワーカーは、経済的な事柄に関する相談も受けています。ご家族のなかで誰かが施設を利用し、あなたが入院するということになると、経済的な負担も大きなものになるでしょう。
医療ソーシャルワーカーは守秘義務がありますので、相談した内容をあなたの許可なく誰かに漏らしたりすることはありません。安心してご相談ください。一般的に、医療ソーシャルワーカーへの相談は無料です。

行政のサービスを利用する
自治体では、住民に対する福祉サービスを行っています。市区町村役場の福祉担当課に相談してみるとよいでしょう。

高齢者で介護保険の認定を受けている場合は、ケアマネジャーにご相談ください。介護保険の認定を受けていない65歳以上の方についても、老人施設を利用したショートステイ(短期入所)などを利用できる場合があるので、市区町村役場または地域包括支援センターに相談してみましょう。

家庭で保育できないお子さんに対しては、一時保育や保育ママ制度があります。ファミリー・サポート・センターといって、会員同士で育児を助け合う有償ボランティア組織が活動しているところもあります。ただし、対象となる年齢は、各自治体、サービスによって異なります。

インターネットを使って調べる
高齢者福祉、児童福祉に関するサービスを提供している事業者のなかには、事業内容をホームページで紹介しているところもあります。また自治体の多くもホームページを開設しています。
この他にも、総合情報サイトの『ワムネット』で、子育てや介護に関するさまざまな制度の概要をみたり、サービス事業者の業務内容や連絡先を調べたりできます。

預け入れの日程に関して相談する
入院予定について、病院から「だいたい○週間後です。また後ほど連絡します」と言われることがあります。介護が必要なご家族の預け先の手続きを進めるためにも、早く入院日が決まればよいのですが、病棟のベッドが空く予定は、入院患者さんの回復状況によって変わります。
入院まちのとき、入院日について余裕をもってあらかじめ決めてほしいと思う一方、入院したら、退院日は治療経過をみながら、からだの回復状況によって決めたいと思うものではないでしょうか。現在、これら2つのことは、同時には成り立ちません。ですから、入院の正確な日程をあらかじめ決めることは難しいのが現状です。
退院してすぐには、育児や介護がこれまで通りにはできない可能性もあります。預け入れ期間については、多少の余裕をもたせながら、サービス事業者と交渉するようにしましょう。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.いつ退院できるか、心配だった。

退院予定と決定
おおよその入院期間は、治療の内容に応じた目安があるので、入院が決まった際に、担当医に確認するとよいでしょう。けれども、これはあくまで予定であり、実際に治療経過と治療効果をみなければ、退院の見通しを立てることができません。退院の基準は、それぞれの患者さんの病状、入院目的、受ける治療によって異なるので、どのような状況になったら退院になるのか、担当医に確認してください。

具体的な退院日時は、担当医の退院許可が出てから、正式に決定します。生活の注意点に関しては、担当医や看護師から話があります。退院後の生活で気になることは、早めに伝えておくとよいでしょう。また、ご家族と一緒に説明を聞くと、家族間で協力体制をとりやすいと思います。

入院期間の延長
入院期間の目安を超えてしまったとき、悪いことや予定外のことが起こったととらえることが多いと思います。
けれども、症状の程度や治療効果、回復には個人差があります。
治療を目安期間のなかに無理に押し込めようとすると、医療の質は低下してしまいます。患者さんの状態の経過に対応した結果、目安を過ぎたということは、患者さんの個別性にあった対応を意味すると思います。担当医、看護師、理学療法士ほか病院スタッフが、患者さんの回復力を高め、安定した気持ちで過ごせるように支援しますので、不安や心配事があれば相談してください。

(更新日:2019年2月25日)
 
通院治療

Q.通院治療中、どういう心構えで過ごせばよいのか。

あなた自身も治療に参加する気持ちで
あなた自身が“病気の治療に積極的に参加する”という気持ちをもつことが大切です。
外来で、薬物療法(抗がん薬治療)や放射線治療を受けられる方が増えていますが、最大の心配事は「もし副作用がでたとき、どうすればよいの?」ということでしょう。
治療前には担当医から、予想される副作用とその対処法について説明があります。看護師や薬剤師からより詳しい説明や指導がある場合もあります。
抗がん薬治療を受ける場合、1~2回目は、特に注意深く、体調の変化、副作用の出方や変化などをメモしておきましょう。メモをとっておけば、後で担当医に確認できますし、以後の治療を受ける際に自分の体調の変化を予想しやすくなります。
放射線治療の場合、照射部位に関連した症状のほかに、治療のためにつけた皮膚のしるしを消さないように気をつけましょう。これは、治療装置の照射口を治療する部分に正確に合わせるためのしるしです。しるしは、消えにくいインクを使用したり、テープを貼ったりしてあります。ですから、からだを拭いたりする程度では、消えません。しるしが薄くなったら、治療前に書き直すので、ご自分で書き足さないでください。
治療に関して心配なことがあれば、担当医や看護師に確認することが大切です。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.初めて抗がん薬治療を受けることへの不安があった。

わからない点、不安な点を担当医に確認する
治療前は、これからの治療への期待とともに、治療の効果や副作用などへの不安があると思います。むしろ、期待より不安のほうが大きいかもしれません。治療に伴う苦痛などへの不安や悩みがある場合、その根底には治療への理解が不十分であったり、未知の事柄への漠然とした不安があったりします。
治療を行う前には、患者さんが治療に耐えられるか、治療に影響する病気はないかなど、多方面から検討します。そして、治療による副作用をできるだけ予防し、もし起こった場合にも早めに適切な対応を行っていきます。患者さんが安定した気持ちで治療にのぞめるよう、医師、看護師、病院スタッフらで支えます。
ご自身の治療について、わからない点は、納得いくまで担当医に確認して下さい。がんや治療方法について書かれた本を読んだり、インターネットで調べたりするのもよいでしょう。

抗がん剤治療のイメージ
抗がん薬治療というと、からだにダメージがある治療というイメージが先行しがちかもしれません。けれども、できるだけ副作用を軽くするための薬の使用、工夫や対応が行われています。同じ薬であっても、患者さんによって副作用の程度は異なります。
副作用は、抗がん薬の影響で起こっているので、薬の種類によっても副作用は変わります。現在は、以前からある殺細胞障害性抗がん薬やホルモン療法薬以外に、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など薬の種類も多様で、副作用もさまざまです。
大切なのは、治療中の自分の体調の変化を理解し、副作用を予防したり、軽くするための工夫をしたり、生活のリズムを調整したりすることと、何かつらいことがあったり、不安なことや困ったことがあれば、医師や看護師などに相談すること、からだがつらいときは、ご家族などにサポートしてもらうことです。
治療は患者さん一人で受けるものではありませんし、医師が勝手に行うものでもありません。患者さんと担当医などの医療スタッフ、患者さんをいろいろサポートしてくれるご家族や友人など、患者さんと患者さんを取り巻く人々との協働作業です。

治療の説明は、ご家族や親しい人に同席してもらう
1. 治療の説明は、ご家族や親しい人に同席してもらう 
がんの診断や治療の説明を受けるとき、不安と緊張でいっぱいだと思います。
まず、最初に心がけておいていただきたいのは、治療の説明を受ける際は、できるだけ1人で聞かずに、ご家族や親しい方に同席してもらい、一緒に話を聞くことです。
これは、心強さの面もありますが、医師の前ではほとんどの方が緊張しています。特に、診断結果や治療について聞くときは、内容によっては激しいショックや動揺が起こります。このようなときに、医師の説明のすべてを理解するというのは難しいものです。また、説明でよくわからないことがあっても、そのまま聞き流したり、説明が音としては耳に入ってくるのに後で思い返すと全く覚えていないということもあるからです。
また、メモがとれる準備をしておくとよいでしょう。説明を聞きながらメモをとるのは自信がないということであれば、医師に申し出て、説明を録音してもよいでしょう。ただし、内緒で録音をするというのは、どのような場合でも礼儀に反し、相手との関係を損ねる原因にもなります。録音する場合は、必ず医師に断ってから録音しましょう。

2. 気持ちが落ち着いてから、同席した方とわからなかったことを確認する
たとえ、説明前に心の準備をしていたとしても、その場では緊張と動揺で質問する余裕はないかもしれません。その場合は、自宅に戻ってもう1度同席した方と話しながら、わからなかったことを確認し、次回の外来の時などに確認しましょう。ショックや動揺が強い場合は、少し気持ちが落ち着いてからでもかまいません。
同席者と説明された内容を確かめ合うことは、お互いに説明に対する理解を深めることにもなりますし、人に話すことで、自分のなかで説明された内容をもう1度整理する機会にもなります。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.通院治療のため、体力的に耐えられるのか不安だった。

通院で行われる抗がん剤治療
現在では、抗がん薬治療もその多くが通院で実施されるようになってきました。これは、抗がん薬の副作用を軽くするためのお薬やその他の対処方法も進歩してきて、通院で可能な治療は通院で行われるようになってきたからです。
患者さんが安心して快適に、抗がん薬治療を受けられるように、がん診療連携拠点病院を中心に、通院治療センター(化学療法センターなど呼び方は病院によって異なります)を開設し、専任スタッフを配置し、リクライニングチェアやベッドを備えたりしています。

通院で行われる治療は、病院を出ると医療者がそばにいないことになるので、患者さんだけではなくご家族も不安がつのることもあるでしょう。
その一方、自分なりのペースで、リラックスして治療を受けることができ、精神的な状態に左右されやすい吐き気や食欲不振も、入院して治療受ける場合よりもかえって少ない、と話される患者さんもいます。
どのようなときに、病院に連絡が必要か、日常生活でどのようなことを気をつければよいかなど確認しておくとよいでしょう。

通院治療と日常生活を考えながら、生活のリズムをつくりましょう
入院中は、ある意味では、『患者としての自分』の生活がずっと続くことになります。
これに対して、通院して治療を受ける場合には、『患者としての自分』だけでなく、仕事に行ったり、家事をしたり、ご家族と食卓を囲んだり、近所の方々と話したり、友人や知人と出かけたりする、『社会のなかで生活している自分』を感じたりすることができると思います。
自分の居場所や役割を再認識したり、社会のなかで“地に足をしっかりつけて立っている”という感覚をもったりすることが、あなたにとっての支えや生きがいにつながることもあるはずです。
ただ、『患者としての自分』と『生活者としての自分』という二つの役割を常に全力投球で行っていると、疲れたり、つらく感じたりすることがあるかもしれません。
治療前、治療中、治療後の体調の変化を見極めながら、自分のペースで生活のリズムをつくりだしていくことが大切です。

(更新日:2019年2月25日)
 
在宅療養

Q.退院直後、1人暮らしだったので家事一切ができずに困った。

退院前に相談する
退院前に、自宅での心配な点について、病棟の看護師や相談室のソーシャルワーカーなどに相談しましょう。自宅に戻る前に相談し、準備することで、退院後に直面する問題を減らすことができます。
また、お住まいの地域の状況をよく把握している市区町村役場の担当部署に相談してもよいでしょう。
年齢や条件によっては、地域のサービスが受けられます。介護保険は、申請と認定が必要で、原則1割の自己負担がありますが、さまざまなサービスを得ることができます。これとは別に、市区町村などの自治体で高齢者向けにいろいろなサービスを行っているところもあります。何に困るのかを整理し、解決していくための方法がないか相談してみましょう。
家事に関しては、最初から以前と同じようにするのではなく、掃除や洗濯は、しばらく週に○回と少なくしたり、食事は、宅配サービスを利用したり、お惣菜などできあいのものを利用してもよいでしょう。最近は、女性も働くことが増えているため、時短料理やレトルト食品に一手間かけるアレンジ方法などの情報も参考になります。

相談窓口を利用してみる
病院では、『医療相談室』など相談専用の窓口を設置し、ソーシャルワーカーと呼ばれる専門職が常駐しているところがあるので、困ったことがあったら一度相談してみましょう(病院によっては、ソーシャルワーカーは医事課などの事務部門に所属している場合もあります)。
ソーシャルワーカーは、医療費の支払いやその他経済的なこと、介護保険や障害者手帳のこと、その他福祉制度のこと、療養中・退院後の生活などの相談にのってくれます。
相談窓口に相談してみると、少しでも負担感を軽くするための良い情報を得られるかもしれません。また、いつでも相談できる先を見つけておくことは、今後のサポートとしても心強いと思います。

(更新日:2019年2月25日)
 
症状・副作用・後遺症

Q.病気の程度、回復の見込み、後遺症などがよく理解できず不安だった。

理解していくために行動しましょう
病気のこと、治療のことなど理解できないことがあれば、必ず一つ一つ確認し、理解していくようにしましょう。これは、あなたが自分のからだの状況を把握し、自分が受ける治療を理解したうえで治療に主体的に関わっていくための行動でもあります。
また、きちんと理解することが不安を軽くし、気持ちを楽にするかもしれません。
理解できないままにしておくと、自分のからだに変化が起こったときにも、それが治療の副作用なのか、がんという病気からくるのか、全く異なる原因からくるのか自分でも判断しづらく、そのようなときにどう対処したらよいのかもわからず、あわててしまったりすることもあるでしょう。
また、疑問やわからないことをそのままにしておくと、少しずつ医師とのコミュニケーションのずれが積み重なり、誤解や不信感につながってしまうことになりかねません。納得いくまで担当医にわからない点を確認することが一番大切です。
症状・副作用・後遺症に関しては、以下の『悩みと助言』のグループが参考になります。
          

あなた自身ができること
あなた自身ができることをまず始めてみましょう。

1. 自分の中で整理してみましょう
まず、あなたが今不安に感じていること、疑問に思っていることを整理してみましょう。ノートに書き出してみてもよいと思います。最初は、長い文章で自由に書いてみて構いませんが、書き終わったら読み直し、最終的に箇条書きにしてみるとよいでしょう。たとえば、「○○の検査の結果が知りたい」、「○○という症状がどうして起こっているのか、知りたい。あるいは、どう対処したらよいか知りたい。」などです。ただ、先生ともっと話したいのに、忙しそうで話しかけられないとかではなく、具体的に整理することが大切です。

2. 予習・復習をしてみましょう
予習・復習というと、構えてしまい負担に感じるかもしれませんが、ちょっとした工夫が、医療者との対話の促進につながったり、確認したいことをきちんと確認できて安心感につながったり、漠然とした不安を解決できたりなどの効果が期待できます。
特に外来通院している場合、外来の診察時間は短いと感じ、担当医に確認しようと思ってもなかなか言い出せないという経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。短い外来時間を有効に使うためにも、予習・復習をしてみましょう。
予習は、次の外来で実施予定の検査、あるいは結果の出ている検査、今ある症状や困っていること、担当医や看護師に聞きたいことを書き出し、整理してみることです。これは、できるだけ1行以内の箇条書きにして、間に空欄を入れておきます。この空欄は診察時、診察後の確認(復習)のときに使います。
復習は、診察室での診療のなかで、大切なことを自分なりに書き出して、まとめてみることです。その場では、すぐ聞けなかった疑問などがあったら、次の外来時に確認できるように、予習のところに、箇条書きで加えておきましょう。
自分なりの治療日記(治療ノート)と言ってもよいかもしれません。

3. 疑問、不明なことをそのままにしておかない
疑問や不明なことをそのままにしておいてはいけません。そのままにしておくと、少しずつコミュニケーションのずれが積み重なり、不信感につながります。医師は説明したつもり、患者さんはわかったつもりでは、信頼関係を築くのは難しいと思います。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.抗がん薬で、からだのだるさや易疲労感、脱力感があり、悩んだ。

抗がん剤治療中のだるさ等の原因
抗がん薬治療を続けている方から、よく「からだがだるい」、「日中もすぐ横になりたくなる」、「疲れやすい」などの声を聞くことがあります。
ただし、だるさや易疲労感の原因は、さまざまです。

原因として、以下のようなことが考えられます。
◎ 抗がん薬の副作用である食欲不振や吐き気による一時的な食事量減少(低栄養状態)
◎ 抗がん薬の副作用(下痢など)による体力の消耗
◎ 治療による体力の消耗
◎ 不眠
◎ 精神的な原因(治療に伴うストレスなど)
などです。
原因は一つだけではなく、いくつか重なって起こる場合があります。

治療に伴うからだの変化を理解しましょう
原因がわかれば、原因にあわせた対応をしていきましょう。
抗がん薬治療による吐き気や食欲不振、下痢等が原因であれば、食事に関して工夫したり、担当医に、吐き気止めや下痢止めなどの使用を含めて相談してみましょう。
また、吐き気や食欲不振、下痢等は、徐々に落ちついてきます。

漠然と、“食欲がない”、“吐き気がする”、“からだがだるい”、“つらいなあ”ではなくて、自分なりに治療に伴うからだの変化をまず理解しましょう。治療開始前や治療時の体調は毎回全く同じではありませんが、だいたい同じような副作用が同じくらいの時期に出てきて、同じくらいの時期に落ちついてきます。
たとえば、治療当日、1日目、2日目と日にちごとに症状や食事量、その他気づいたことなどを書いておき、一つの目安にするとよいでしょう。このとき、つらいところだけではなく、「○日目 ○○なら食べられるようになった」とか、「○日目 少しだるさがとれてきた」など自分の体調や状況も書いておきましょう。そして、治療に伴う自分の体調の変化をつかみ、その変化にあわせて生活を工夫していくようにしてみましょう。
からだのだるさや疲れは、こころの状態も影響するので、“今は治療のあとの一番つらい時期だから、日中も横になりたいと思ったときは、やっていることを中断して横になろう”、“そろそろ食事も食べられるし、だるさも少し楽になってきたから、からだを動かし、食事も栄養を意識しながらがんばってすすめてみよう”と生活にリズムをつけたり、区切りをつけたりしていくことが大切だと思います。

ご家族など周囲にも理解してもらう
だるさとか易疲労感は、周囲の人にはなかなか伝わりにくいものです。周囲の人に体調の変化を理解してもらい、つらいときはサポートしてもらいましょう。
通院で抗がん薬治療を受けながら、仕事に行ったり、家事をしなければならない場合もあります。特にご家族には、抗がん薬治療を受けた後、自分の場合は、いつ頃こういう状態になる、だから、こういうときは手伝ってもらうこともあるし、何かした後、すぐ横になって休むかもしれないと、わかってもらったほうがよいと思います。がんばりすぎないようにしていくことも大切です。

(更新日:2019年2月25日)
 
医療費の負担を軽くする

Q.がんになって、あるいは治療のため、仕事を休んだり辞めざるをえず、収入など経済的な不安が大きかった。

傷病手当金の給付
療養や治療のために仕事を休む場合、健康保険に加入している会社員や公務員であれば、『傷病手当金』の給付を受けることができます。
退職によって被保険者でなくなる場合も、継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日に給付を受けているか、または受けられる状態にある場合には、引き続き『傷病手当金』の給付を受けることができます。
以下ではこの制度の概要をお示しします。より詳しい内容やわからない点については、保険証に記載のある保険者、会社の総務課などにお問い合わせください。

○ 給付金額
1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する金額になります。
なお、次の場合などは給付金額が調整されます。
(1)休んだ期間に事業主(会社)から報酬の支給を受けた場合
(2)傷病手当金の給付理由と同一の病気で障害年金を受けている場合
(3)退職後、老齢基礎年金などの年金を受けている場合

○ 給付を受けられる期間
会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目から支給されます。
支給されるようになった日から通算して1年6か月になるまで給付が受けられます。つまり、もし、支給期間中に途中で就労するなど傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給されるようになった日(支給開始日)を起点として1年6か月を超えても、傷病手当の支給を受けた期間が通算して1年6か月になるまでは給付が受けられることになります。
なお、休み始めの最初の3日間(待機期間)は、有給休暇であっても、報酬を受けていても給付に支障はありません。

○ 手続き
傷病手当金の請求には、療養の事実についての担当医師の証明と、休業期間中の賃金支払い状況についての事業主(会社)の証明が必要になります。詳しくは、保険証に記載された保険者にお問い合わせください。

○ 資格喪失後の継続給付について
資格を喪失する日の前日までに1年以上継続して被保険者であった場合は、すでに受給している(もしくは受給要件を満たしている)傷病手当金の継続給付を受けることができます。

○ その他の注意事項
国民健康保険にはこの制度はありません。(国民健康保険組合の一部を除く)

高額療養費制度とは
医療費による経済的な負担を軽くするための高額療養費制度という制度があります。
『高額療養費制度』は、医療機関等で支払った医療費(差額ベッド代や食事代などは別途必要になります)が、月の初めから終わりまでの1か月で一定の額(自己負担限度額)を超えた場合に、保険者に申請することで(多くの健康保険組合は、自動的に高額療養費が支給されます)、その超えた金額を支給する制度になります。
医療費は年齢や収入に応じて1カ月に支払う自己負担限度額が定められています。
対象となるのは、公的医療保険が適用される医療費です。これには、病院や診療所の窓口で支払う保険診療の自己負担分のほか、医療機関から処方箋をもらって調剤薬局で購入する薬の代金も含まれます。医療保険が適用されない費用(差額ベッド代、食事代、診断書等の書類作成費用など)は、この制度の対象とはなりませんのでご注意ください。

所得区分の『認定証』(限度額適用認定証など)
医療費が高額になりそうなときには、あらかじめ所得区分の『認定証』の交付を受けて医療機関の窓口で提示することで、入院、外来診療ともに窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。
70歳未満の方、70歳以上で所得区分が現役並みIかIIの方、住民税非課税世帯の方で、高額の支払いが見込まれる治療をする場合には、事前に所得区分の『認定証』を自分が加入している保険者(保険証に記載してある)に申請し、入手しておきましょう。
医療機関の窓口で『認定証』を提示することで、会計窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。

なお、70歳以上で所得が「一般」、もしくは「現役並所得III」の方が治療する場合は、窓口での支払いが自動的に自己負担限度額までになるため手続きは不要です。
注意)国民健康保険・後期高齢者医療保険制度の被保険者の方で、保険料の滞納がある方は認定証の発行がされない場合があります。

『認定証』の申請をせずにいったん窓口で支払いをした場合も、後日保険者に申請をして払い戻しを受けることができます。

高額療養費制度の払い戻し
いったん、医療機関の会計窓口で支払い、後日保険者に申請して払い戻しを受ける場合、保険証に記載のある保険者に、必要書類を添えて申請します。必要書類は保険者によって異なりますので、お問い合わせください。
ただし、高額療養費を申請して支給されるまでには、少なくとも3ヶ月程度かかります。1ヶ月に1つの医療機関での支払いが高額になる可能性がある場合には、『認定証』をあらかじめ申請しておきましょう。

◎注意点
○保険者によっては、高額療養費制度に該当することの通知がない場合もある
○医療機関にかかった翌月以降に申請する
○支払い直後に申請をしていなくても、2年前までさかのぼって申請することができる
○払い戻しには、治療を受けた月から、少なくとも3か月程度の期間がかかる
○加入している保険の種類や地域によっては、払い戻しまでの当座の支払いを支援する貸付制度や委任払い制度を利用することができる
詳しくは、加入している保険証に記載してある保険者までお問い合わせください。

自己負担限度額の計算方法
以下で説明するのは患者さん個人の計算方法です。状況によっては世帯全体(この場合の"世帯"は、公的医療保険の被保険者とその被扶養者のことなので、ご注意下さい)で合算できる場合もありますので、保険証に記載のある保険者(各市区町村窓口、全国健康保険協会都道府県支部、健康保険組合など)までお問い合わせください。なお、金額は2022年10月現在のものです。

以下に年齢別に記載しましたので、該当の項をご覧ください。

70歳未満の方
その月の医療費の自己負担分について、医療機関ごとに、また外来と入院にわけて、それぞれ21,000円以上のものを合計します。合計したものが、ご自分の所得区分で『自己負担限度額』以上であれば、超えた部分について払い戻しを受けることができます。
所得区分の『認定証』を申請・提示することで、あらかじめ支払いを自己負担限度額までにすることができます。


70歳以上の方
その月の医療費(病院・診療所・歯科・調剤薬局の区別なく)の自己負担分すべてを合計します。
医療機関の会計窓口での支払いは、70歳以上で、所得区分が、一般、現役並み所得IIIの方が治療する場合は、窓口での支払いが自動的に自己負担限度額までになるため手続きは不要です。
所得区分が現役並みIか現役並みIIの方、住民税非課税世帯の方で、高額の支払いが見込まれる治療(入院・外来)を予定する場合には、事前に所得区分の『認定証』を自分が加入している保険者(保険証に記載のある)に申請し、入手しておきましょう。


高額医療・高額介護合算制度
世帯内で同一の医療保険の加入者の方について、1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担を合計して、基準額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
同一世帯で医療と介護にかかった費用の負担を軽くできます。

ただし、保険適用外の医療費や介護サービスなどは、高額医療・高額介護合算療養費の対象にはなりません。また、基準額は、世帯員の年齢構成や所得区分によって異なります。

合算の対象は1年間(8月1日~翌年7月31日まで)になります。

詳しくは、医療保険の保険者、あるいは介護保険の窓口にお問い合わせ下さい。

ソーシャルワーカーに相談しましょう
傷病手当金や高額療養費制度のほかにも、状況によっては、介護保険、身体障害者手帳、障害年金、医療費控除、生活保護など、さまざまな制度を活用して、経済的な負担を軽くすることができます。
あなた自身の状況で、どのような制度が利用できるか、適切な助言をしてくれる専門職がソーシャルワーカーです。
ソーシャルワーカーを配置する病院の数は少しずつ増えています。おかかりの病院にソーシャルワーカーがいるかどうか、受付や相談室で尋ねてみてください。
おかかりの病院にソーシャルワーカーがいない場合でも、お住まいの地域に近いがん診療連携拠点病院の相談支援センターにソーシャルワーカーがいるかもしれません。下記のホームページで調べてみてください。

(更新日:2022年10月24日)
 
日常生活動作・リハビリテーション

Q.手術後、同室の同病者と治療が違っていたり、治りが自分の方が遅かったりして悩んだ。

それぞれの患者さんで治療は異なります
同じ病名であっても、病気の状態(がんの進行度、場所、組織型、遺伝子変異の有無など)、併存症(高血圧や糖尿病など)、重要臓器の機能(心臓、肺、肝臓、腎臓の機能など)などによって、治療は異なります。
標準となる診療の指針として、臨床試験や臨床研究の結果に基づき、有効性が確認された『診療ガイドライン』が作成されています。ガイドラインに示されている治療の適応や種類と、個々の患者さんのからだの状態について、スタッフの間で検討し、治療が決定されます。

回復には個人差があります
治療の一般的経過から数日のずれを、回復の遅れととらえることが多くなったように思います。以前ならあまり気にすることがなかったのですが、入院期間が短くなった影響があるように思います。
また、最近では、病気や治療別に、検査・ケア・処置などの内容や、患者さんの状態などを日にちに沿ってまとめた紙面を使って説明する病院・病棟が増えてきました。患者さん、ご家族にとって、治療と療養生活の全体や時間経過が分かりやすい利点があります。
けれども、あくまで患者さんの標準的な経過を想定したもので、どの患者さんもこの通りということではありません。遅い・早いといった『ずれ』は、ひとりひとり違う患者さんの特徴であり、医療者は、患者さんの状態に合わせて、回復がすすむように支援していきます。心配な点は、医師や看護師にご相談ください。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.術後のリハビリの進め方等、どうすればよいか不安だった。

身の回りの動作もリハビリテーション
手術後、運動機能の回復を促すため、早期から、リハビリテーションを開始します。リハビリテーションのはじめは動かすと痛いこともありますが、元の生活に近づくことを目標に、手術の状況や体の回復に合わせて行います。言い換えると、リハビリテーションのゴールは人によって異なります。
入院中のリハビリテーションは、医師、理学療法士や看護師の指導のもと、簡単な動作から行いますが、身の回りの動作もリハビリテーションになります。例えば、上肢の手術を受けた方には髪の毛を整える動作、下肢の手術を受けた方は洗面やトイレまでの歩行がリハビリテーションのひとつになります。状況をみながらリハビリテーションの難易度を上げていきますが、退院後も機能の向上、維持のために、リハビリテーションを続けることが大切です。
それぞれの患者さんの回復の具合や生活の状況に合わせて、医師、理学療法士や看護師が支援していきますが、家庭生活の様子を伝えていただくと、目標が立てやすく、具体的な助言が得られると思います。
リハビリテーションが順調に進まない、痛みが強いなどの悩みをお持ちだった患者さんに、当時のことを聞いてみると「今思えば、焦らなくても大丈夫だった。進み具合は人それぞれ」と話されます。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.退院の頃、まだ傷の痛みや腕が思うように使えない状態だったので、普段の生活や仕事ができるか不安だった。

退院後の日常生活
手術の影響で、肩の関節が動きにくかったり、皮膚がつっぱった感じがあったり、痛みがあったりして、からだを動かすことにためらいを感じてしまうこともあるでしょう。
入院して治療をする必要がなくなれば、退院して、通院と自己管理で回復を促していきます。入院中は治療に専念した生活を送っているので、退院後すぐは、どのような療養生活を送ればよいか、とまどいがあるかもしれません。しかし、回復を促す要素は、自宅での日常生活のなかにあります。自宅環境で過ごすことによって、自分らしい生活を獲得できるのです。
リハビリを担当する理学療法士は、リハビリ室の運動よりも、日常生活のなかで行う活動のほうが、重要で意味があると言います。拭き掃除や掃除機をかけるなどの家事動作に、いろいろな腕の運動が含まれていることは、言うまでもありません。
自宅での生活状況や目標は、患者さん一人ひとり違っています。それぞれの状況にあわせて、体調の回復の程度をみながら、活動量の調整ができるのは、患者さん自身です。

(更新日:2019年2月25日)
 
仕事や社会復帰について

Q.会社を休職することで病名を知られることに悩む。

職場の人たちにどこまで伝えるか
がんに罹患した後、仕事をどうするかという問題とともに、職場の人達にどこまで伝えるかという問題もあります。雇用状況が厳しいこともあり、なかなか難しい状況も存在します(希望しないところへの配置換えやリストラなど)。
一方で、本人の状況に合わせて考えてくれる職場もあります。
いずれにしても、手術や治療で入院している間だけではなく、外来通院の日は休まなければいけないとか、あるいは退院後もしばらく療養が必要な場合もあり、その場合には職場への届け出も必要になります。例えば、病気休業中の健康保険加入者とその家族の生活を保障する制度である傷病手当金には、療養の事実についての医師の証明なども書類上必要になります。

信頼できる上司に相談する
職場の誰に話をするかですが、まずはプライバシーを含め信頼できる上司に打ち明け、相談してみてはどうでしょうか。傷病手当などの各種手続きの関係などで、事務関連部門にはある程度伝える必要がありますが、全員に話すかどうかはあなた次第だと思います。確かに、人によって反応もさまざまだと思いますし、人の理解の仕方もさまざまです。その一方、職場にもあなたをサポートしてくれる存在がいることは心強いといえるでしょう。
また、事務関連部門は、知り得た個人情報をもらすことはプライバシーの点からも問題となりますが、まずは担当者にその旨伝えておいた方がよいでしょう。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.仕事を続けるか辞めるかどうか悩んだ。

仕事は『あなたらしさ』を支えてくれる
仕事は、お金を得る手段であると同時に、あなたが自分らしく生きていくための、大切な支えにもなるものです。
あなたはきっと、自分自身の仕事に対して誇りや思い入れを感じているのではないでしょうか。それは、すばらしいことです。
ただ、がんという病気は、場合によっては人生を左右するような病気である、ということもまた事実です。
仕事と病気の治療のどちらを優先するか、ということについて、『どんな人でも絶対にこうするべきだ』という答えはないと思います。
その選択をすることで、得ることができるもの、ゆずれないもの、代わりに手放さなければならないものを総合的に判断しながら、最終的にはあなた自身で決断していくしかありません。

自分に正直になること、後悔しないこと
がんという病気は、仕事も含め、あなたの人生にとって本当に大事なことは何か、見つめなおすためのきっかけにもなります。
大切なことは、二つあります。
まず、『自分自身の気持にできるだけ正直になること』です。
あなたが本心から望むのであれば、「職場の同僚に迷惑をかけられない」、「家族の生活を支えたい」といった思いは、選択の根拠になります。ただ、義務感だけに縛られる必要はないでしょう。
もう一つ、『後悔しないこと』も大切です。
その時々の決断は、体やこころの状態、時間、情報など、たくさんの制約があるなかで、あなたができた『最善の選択』だったということを、忘れないでください。
もし、家庭や職場の状況によって、病気の治療を受けたいのに受けられないような場合には、何かほかに方法がないか、考えてみましょう。
必要に応じて、『がん相談支援センター』や『医療相談室』にいる相談員に相談してみるのもよいでしょう。

仕事と病気の治療は人生の両輪と考えてみる
ぜひ考えてみて頂きたいことは、仕事と病気の治療がぶつかるとは限らない、ということです。
もしあなたががんと診断されて間もない方で、病気の状態や今後の治療方針についてまだ十分な情報を得ていないのでしたら、まずはその点を担当医によく聞いてみることが大切です。
がんという病気になることで、焦りや不安から、“何もかも投げ出して治療に専念したい”という気持ちになるかもしれません。
しかし、がんを治して社会復帰される方も大勢いますし、その数は増えています。また、がんになったからと言って、ずっと病院で入院しているわけではありません。職場の理解を得ることができれば、仕事を続けることは十分に可能です。まずは信頼のおける上司に相談してみてください。
仕事は、あなたの生活に張りや生きがいをもたらします。仕事に没頭している間は、病気のことを忘れる時間を持つことができますし、仕事を通じて社会に接点を持ち続けることは、生きる活力につながります。
仕事と病気の治療は、必ずしもどちらかがどちらかを犠牲にするような関係にあるのではなく、むしろ互いに支えあいながら、あなたの人生を進めていく両輪の役割を果たすことができるものです。
『どちらかを優先する』という発想を、『どちらもうまく両立させるための折り合いをみつける』、『互いに支えあいの関係にするにはどうすればいいか』という発想にうまく切り替えていくために何か方法がないものか、手立てを考えてみてください。

(更新日:2019年2月25日)
 
家族との関係

Q.家族と自分の治療の考え方が異なるため、どうしたら1番良いのか悩む。

周囲の人は患者さんのためと思っても患者さんにとっては負担になることがある
親戚や知人からのいろいろな勧めや意見、干渉が苦痛だったり、家族内で、治療や今後の方針について意見の不一致が起こったりすることがあります。たとえ患者さんのことを心配して“何とかしようとして”という一生懸命の気持ちからのことであっても、患者さんにとってこころの負担になってしまうことがあります。

患者さんは自分の気持ちを相手に伝える
最終的にはやはり、ご自分の気持ちをはっきり告げることです。「自分は自分で決めて今の病院、今の治療方法を選んだ、いろいろな意見はあるかもしれないが、自分はこれでやってみるつもりなので、見守ってほしい」と伝えることです。なかには、それでも、何かと言ってくる人がいるかもしれませんが、「今の治療に集中したいので、わかってほしい」と話してみてください。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.入院することで子どもの生活が1番心配だった。

問題を具体的に整理する
お子さんの生活が心配とのことですが、まず問題を具体的に整理して、それからどのような方法をとれるのか考えていくことが大切です。また、整理したり考えるとき、一人ですべて処理しようとせずに、配偶者やその他の家族、お子さんと話し合うことも大切です。話し合うことで、お互いの思いを理解し合うこともできますし、良い案がでることもあります。

整理しておくことは、以下のようなことがあります。
1. あなた自身は、どのような治療でどのくらいの入院期間なのか
治療によっては、退院後すぐにお子さんの世話や家事全般を入院前と同様にこなすのは難しいかもしれません。およその目安は担当医からの治療の説明などで把握できると思いますが、ご家族皆さんが共通の認識を持つためにも、確認しあってみましょう。
2. お子さんはあなたの病気や入院をどう理解しているか
お子さんにはどのように話しているのか、あるいは話すのか。お子さんはそのことをどのように理解しているのか。
3. お子さんの生活のどの点が気がかりか
たとえば、小さいお子さんであれば育児全般、通園中あるいは小学校低学年であれば送迎、お昼のお弁当、食事の世話、洗濯など身の回りの世話、宿題の確認、学校との連絡などが挙げられます。年齢等によっても異なると思いますが、具体的にどこが気になるのか書き出してみましょう。
4. あなたが入院中、お子さんのお世話は誰が中心で行うのか
上記3点を整理し、誰が中心で行うのか、分担できる部分については、誰に何をお願いするのか考えましょう。1人に負担が集中しないように、協力し合うことが大切で、お子さん自身にもできることがあります。

お子さんと話してみること
お子さんが小さいから、あるいは受験を控えているからとか、ショックを受けるとかわいそうだからという理由で、親御さんが病気になったとき、入院するとき、あるいは家族に何か大きな出来事があったときに、お子さん抜きで、どうしたらよいかと大人が心配したり、話し合うことがあります。
でも、どんな小さなお子さんであっても、あるいは受験を控えているお子さんであっても、周囲の変化には敏感ですし、大人と同じように親御さんのことを心配します。お子さんが小さい場合でも、お子さんが理解しやすい言葉で、あなたの病気や治療、入院のことを伝えることは大切だと思います。同時に、あなたが入院に際し、お子さんの生活を心配しているその気持ちも伝えてみましょう。
入院するといっても、その間、あなたが何もできないことはないと思います。一日一回の電話であっても、大切なコミュニケーションの時間であり、お子さんのいろいろな出来事や思いを聴いてあげることができると思います。

乳幼児の世話をする人が不在の時
もし、お子さんが乳幼児で、あなたが入院中に世話をしてくれる方が身近にいない場合は、一時保育などのサービスを探したり、手続きが必要になるかもしれません。
そのような場合は、あなたがかかっている病院の相談室や、医療ソーシャルワーカーなどに相談してみましょう。
また、お住まいの市区町村の行政機関でも、生活支援サービスの一つとして一時保育等を行っているところがありますので、相談してみてもよいと思います。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.親の世話について悩んだ。

利用できる資源を検討する
高齢(65歳以上)のご両親の介護とご自分の治療のことを悩んでいらっしゃるのであれば、介護保険を利用し、地域のサービスを得ることができる場合があります。
介護保険は市区町村の担当窓口に申請し、認定を受けて利用します。ご自宅でホームヘルパーによる食事、入浴、排泄等の介護を受けたり、デイサービスを利用したりすることができます。費用の自己負担は、総費用の1割が原則です。
現在は家族に高齢、病気や障害のために介護や治療が必要な方がおられなくても、将来的な問題として抱える方は大勢いらっしゃるでしょう。
このようなとき、1人で全て抱え込もうとするのは大変なことです。支援を得ることに抵抗を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、がんで治療を受けるというのは身体だけでなく、精神的にも社会的にも大変なことだと思います。ご自身そしてご家族のためにも、利用できる資源をいろいろ検討してみましょう。

相談窓口を利用してみる
病院では、『医療相談室』など相談専用の窓口を設置し、ソーシャルワーカーと呼ばれる専門職が常駐しているところがありますので、困ったことがあったら一度相談してみましょう(病院によっては、ソーシャルワーカーは医事課などの事務部門に所属している場合もあります)。
ソーシャルワーカーは、医療費の支払いやその他経済的なこと、介護保険や障害者手帳のこと、その他福祉制度のこと、療養中・退院後の生活などの相談にのってくれます。
相談窓口に相談してみると、少しでも負担感を軽くするための良い情報を得られるかもしれません。また、いつでも相談できる先を見つけておくことは、今後のサポートとしても心強いと思います。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.手術することになり、子ども達の世話や留守を身内にお願いに行ったが、皆に心配をかけ申し訳ないと負い目を感じた。

家族の結びつき
ご家族やご親戚は、“自分にできることは協力したい”と思っているはずです。
負い目を感じたということですが、助けてもらう人よりも力を貸す人が優位に立っているわけではないと思います。
力を貸す人は、与えるだけでなく、必ず受け取るものがあります。人の役に立てる喜びや、家族の結びつきが強化されることも、そのひとつです。

困っていることを話してみる
困っていることや、お願いしたいことを、ご家族に話してみると、自分で考えていたより簡単に引き受けてもらえたり、別のよい方法が見つかるかもしれません。
お願いしたいことを具体的に伝えるほうが、協力を得やすいと思います。
それぞれに家族があって長時間家を空けられない場合も多く、比較的負担が少ない方法として、半日程度の時間を調整したり、複数で協力体勢をとったりしている方が多いようです。お子さんにとっても、新しい役割を担うことは、成長や自立を促す効果があるでしょう。家族でよく話し合ってみてください。
また、社会のいろいろな制度や支援が利用できる場合もあるので、病院の相談窓口などに相談して、解決していくための情報を集めてもよいと思います。

(更新日:2019年2月25日)
 
医療者との関係

Q.人生初めての入院生活のため、病院、医師、看護師等への心配があった。

信頼できる医師とは
医師には自分の身体を預けるわけですから、特に、医師との関係性が気になると思います。
信頼できる医師というのは、その人自身(患者さん自身)の価値基準が入ってきます。自分は、医師に何を求めるのか、責任感がある、人柄がよい、専門的知識・技術を身につけている、説明を十分に行ってくれる、話しやすいなどいろいろあると思います。
ただし、人柄がよい、話しやすいという印象は、人によって異なり、信頼関係が築きやすい場合もあれば、難しい場合もあります。そのようなときは、どちらか片方の働きかけが有効に働くことがあります。また、周囲の人が助けになってうまくいく場合も多くみられます。信頼関係は、お互いが築きあげていくものだと思います。

コミュニケーションをとることが信頼関係を築く第一歩
入院中は、医師はもちろん看護師、栄養士、薬剤師等、いろいろなスタッフが関わります。心配や不安などがあったとき、遠慮なく聞きやすい人に相談してみてください。コミュニケーションをとることが信頼関係を築く第一歩になり、安心して入院生活を送ることにつながると思います。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.先生にいろいろと聞きたいけれど聞くのも恐いし、聞かないのも不安で考えるだけで日々が過ぎていく。

担当医に質問してみる
担当医に質問してみると、不安が軽くなると思います。自分の頭のなかだけで考えていると、どうしても悪い方の考えに偏りがちになり、答えが見つからないので漠然とした不安が残ったままになります。
担当医から回答をもらうことで、想像以上に早く気持ちが晴れるかもしれません。考えていたよりも簡単に解決することも少なくありません。たとえ厳しい、今はまだ明確な回答がでないという返事であったとしても、もやもやした気持ちのままでいるよりも、すっきりすると思います。

医療者と向き合う時間
医療者とうまくコミュニケーションをとっていくためには、あなた自身が積極的に働きかけることや、短い時間であっても、医療者と向き合う時間を有効に使っていく工夫をしていくことが大切です。
最近では、がんの治療も通院で行う治療が増え、また入院が必要な場合であっても、以前に比べ入院期間自体がとても短くなっています。特に、外来診療では1人あたりの診療時間も短いと感じることが多いかもしれません。
入院の時であれば、検温などで定期的に患者さんのベッドサイドに来ていた看護師も、外来診療では人数も少なく、なかなか話しかけられないと感じることでしょう。
そこで、あなた自身ができることをまず始めてみましょう。

良好なコミュニケーション、信頼関係を築くためにあなた自身ができること
1. 原因を自分のなかで整理してみましょう
まず、あなたが今不安に感じていること、疑問に思っていることを整理してみましょう。ノートに書き出してみてもよいと思います。最初は、長い文章で自由に書いてみて構いませんが、書き終わったら読み直し、最終的に箇条書きにしてみるとよいでしょう。たとえば、「○○の検査の結果が知りたい」、「○○という症状がどうして起こっているのか、知りたい。あるいは、どう対処したらよいか知りたい」などです。ただ、先生ともっと話したいのに、忙しそうで話しかけられないとかではなく、具体的に整理することが大切です。

2. 外来の場合は、特に予習・復習をしてみましょう
予習・復習というと、構えてしまい負担に感じるかもしれませんが、ちょっとした工夫が、医療者との対話の促進につながったり、確認したいことをきちんと確認できて安心感につながったり、漠然とした不安を解決できたりなどの効果が期待できます。
特に外来通院している場合、外来の診察時間は短いと感じ、担当医に確認しようと思ってもなかなか言い出せないという経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。短い外来時間を有効に使うためにも、予習・復習をしてみましょう。
予習は、次の外来で実施予定の検査、あるいは結果の出ている検査、今ある症状や困っていること、担当医や看護師に聞きたいことを書き出し、整理してみることです。これは、できるだけ1行以内の箇条書きにして、間に空欄を入れておきます。この空欄は診察時、診察後の確認(復習)のときに使います。
復習は、診察室での診療のなかで、大切なことを自分なりに書き出して、まとめてみることです。その場では、すぐ聞けなかった疑問などがあったら、次の外来時に確認できるように、予習のところに、箇条書きで加えておきましょう。
自分なりの治療日記(治療ノート)と言ってもよいかもしれません。

3. 疑問、不明なことをそのままにしておかない
疑問や不明なことをそのままにしておいてはいけません。そのままにしておくと、少しずつコミュニケーションのずれが積み重なり、不信感につながります。医師は説明したつもり、患者さんはわかったつもりでは、信頼関係を築くのは難しいと思います。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.看護師との関わり方に悩んだ。

自分自身の思いを伝えたり、働きかけにこたえる
人と人とが良い関係をもつには、意思疎通を図り、お互いを尊重する姿勢が大切です。患者さんと看護師の関わりも同様で、看護師は、患者さんが求めていることをきちんと受けとめることが大切ですし、患者さんも自分自身の思いを伝えたり、看護師の働きかけにこたえたりしなければ成立が難しくなります。

たとえば、手術後の患者さんに対して、看護師が「さあ、歩きましょう」と促し、患者さんから「動けない」という返事だけでは、お互いの頭のなかの思いが通じません。
この場面での看護師は、『術後早くから動くことにどのような効果があるのか』を説明していませんが、その理由が分かれば、患者さんは“動こうか”という気持ちになるかもしれません。患者さんが「痛みが強いから」と言葉を付け加えていたら、続いて看護師は、痛みの程度を尋ねるなど会話を重ね、お互いの思いを共有できたでしょう。

入院中、病気や治療によって、自由に体が動かせない場合には、看護師が身の回りの世話を行います。また、身の回りのことは自分自身で行えるけれど、治療が順調にすすむように、治療中の生活の注意点や対処の方法に関して、助言を求める患者さんもおられるでしょう。
病気を患ったときには、心身や生活面の何らかの援助を必要としますが、援助をする・受けるという立場に上下の関係性はありません。看護師に遠慮や気兼ねなく、あなたの思いを伝えて下さい。看護師は、患者さんやご家族から学ぶことがたくさんあるのです。

思いを意見として伝えることで誤解をといたり改善につなげたりする
医師や看護師など病院のスタッフから言われたことに対し、傷ついたり、つらいと思う経験をされたりしたら、その場でその思いをはっきり伝えることが一番よいと思います。
その場で話しにくいようであれば、看護師長等に話したり、病院に意見としておっしゃっていただいてもよいと思います。
また、最近では、ご意見箱などを設置している病院も増えています。ただ、ご意見箱の場合、匿名も可能ですが漠然とした対象になり、本人にうまく伝わらないときもあります。
医療者が無意識に言っている言葉や態度が、患者さんにとって、つらいこともあります。残念ながら、当事者は患者さんがそのような思いをしたということを、言わなければ気づかないことがあります。もちろんお互いの誤解という場合もあります。ただ、そのままにしていると、誤解かどうかもわからないままになってしまう場合もあるのです。

(更新日:2019年2月25日)
 
思いを分かち合いたい

Q.通院治療になり入院中のように同じ病気の人と不安なことについて話ができなくて、誰にわかってもらえるのかと悩んだ。

気になることを医師や看護師に質問する
患者さんから「入院中、同じ病気の患者さんに、これからの治療の話を聞いたり、アドバイスをもらって、少し安心した」という声を聞きます。
一方、外来では、診察時間が限られており、医師や看護師に気になっていることなどを十分に話ができないことがほとんどだと思います。
しかし、悩みは自分で抱え込まず、気になることを医師や看護師に質問してみましょう。患者さんの発言が診断の材料やきっかけになることもあります。
長い待ち時間のあいだ、患者さん同士のコミュニケーションがとれればよいですが、さまざまな病気、治療の段階の患者さんがおり、人の往来があり落ち着かない場所で、どの人なら快く応対してくれるのか、なかなか難しい状況です。
ご自分の病気の状態や行っている治療の方法・副作用・合併症などをよく理解することが、安心につながることも多いと思います。

相談窓口の利用
けれども、直接患者さんをみている担当医や看護師だからこそ、いえないこともあると思います。
その場合、相談窓口に話してみることも1つの方法です。
自分のかかっている医療機関に相談室があれば、そこに相談してみてもよいですし、各都道府県にあるがん診療連携拠点病院の相談支援センターでは、その医療機関にかかっている患者さんやご家族以外の相談にも対応しています。
患者会や患者支援団体のなかには、電話相談をおこなっているところもあります。

患者さん同士のコミュニケーションの場
悩み事を医療者に相談してみることも大切ですが、『患者さん同士だからこそわかりあえる悩みや気持ち』というものも確かにあります。また、直接、患者さんをみている担当医や看護師だからこそ、いえないこともあると思います。
患者さん同士の気持ちの分かち合いは、さまざまな形で行われています。たとえば、患者団体での集まり、あるいはソーシャルネットワーク、医療機関や地域の施設で開かれている『患者サロン(がんサロン)』、患者団体等が行う電話相談、いろいろな形ですが、同じような経験をした人たちだからこそ分かり合えるつらさや嬉しさ、思いがあります。地域内のこれらの情報に関しては、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターに尋ねてみましょう。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.今後の人生はがんと共生しなくてはならないのかと悩んだ。

がんとうまく付き合う
患者さんの悩みの声のなかで、「がんとうまく付き合って」と前向きにとらえている方がいらっしゃいます。先に経験された患者さんのこころの状態や対処法を聞くことは、とても参考になります。
がんとうまく付き合うには、からだとこころの両方の声を聞きながら、調和の乱れを早く察知し、無理をせず自分にあった生活を送ることが大切です。

自分のがんについて知る
がんは残念ながら、再発したり、転移を起こしたりすることがあります。「がんと共存する」「一生付き合っていく」と時々言われるのは、このように、再発や転移の可能性があることも関係します。そのため、治療が終了した後も、定期的な通院や検査が必要になります。
自分のがんについて知るために、担当医から治療や病状について説明を受け、分からないことは質問しましょう。

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.気遣いや心配しての言葉に対して、そのことには触れないでと叫びたい気持ちだった。

周囲の人は患者さんの敏感で傷つきやすいこころを理解する
周囲の人は、患者さんがこのような思いを感じることがあると理解することが、サポートの第一歩となります。
がんと診断された後や、治療の開始前、治療後の回復途中にある患者さんは、とてもこころが敏感になり傷つきやすくなります。励ましの言葉が、患者さんには負担になることがあります。

がんを意識してしまう
患者さんから「病気のことが頭から離れない」、「一瞬忘れていたと思ったが、それ以外は常に意識している」という話を聞きます。そのとき、周囲の人は「神経質になりすぎているのではないか」、「そんなことばかり考えてないで、元気をだしなさい」と言ってしまいがちです。けれども、がんという病気は、神経質にもなりますし、症状などをすべてがんに結びつけて考えがちになってしまうのです。だから、これば特別なことではありません。
複雑で揺れ動く気持ちを言葉にするのは難しいですが、できるだけ表現してみることで、こころの落ち着きが取り戻せる場合もあります。

(更新日:2019年2月25日)
 
補完代替療法

Q.自分にはどの代替療法がよいのか悩んでいる。

代替療法とその種類
私たちは西洋医学の考え方に基づいた医療を病院で受けています。手術、薬物療法(抗がん薬治療)、放射線治療を中心とする通常行われているがん治療も、この中に含まれます。
これに対して、『代替療法』と言われている<薬>や<治療>もあります(がんに関しては、がんの進行を抑えたり、治したりする効果は証明されていないという意味で<>括弧つきで表記しています)。
一般的に『代替療法』と言われるものには、2種類あります。一つは、標準的な治療を受けながら、生活の質を上げるために行う『補完療法』です。もう一つは、がんを治療するために、標準的な治療に代わって行う、『狭義の代替療法』です。
代替療法には、漢方薬、気功、鍼灸、指圧、マッサージ、カイロプラクティックなどのほか、いわゆる民間療法、健康食品、サプリメントも含まれます。

がん患者さんと代替療法
健康の自己管理やインターネットの普及によって、代替療法の利用者が増えていると言われています。がん患者さんについては、ほぼ2人に1人が、何らかの代替療法を使用している、というデータもあります。
患者さんの多くは、がんの進行を抑えたり、がんを治したり、がんの症状を和らげたりすることを目的に、代替療法を使うようです。
しかし、残念ながら、がんの進行を抑えたり、治したりするということについて、代替療法の有効性を示す結果が出たことは、これまでのところありません。
一方、『不安、悪心、リンパ浮腫に対するマッサージ』、『サポートグループ』、『認知行動療法』など、つらさを和らげたり、こころの支えになったりする点では、代替療法は有効的な場合もあります。
つまり、代替療法は、あくまで本来の有効的な標準的治療(科学的に有効性と安全性がはっきりと証明されている最新の治療)の補助と考えた方がよいのです。
代替療法を行うことで、標準的治療を受ける時期が遅くなってしまったり、標準的治療を受ける機会を失ってしまったりすることは、避けなければなりません。また、健康食品やサプリメントのなかには、薬物療法や他の医薬品との併用でマイナスの影響がでるものもあります。

代替療法に何を期待しているか、考えてみる
もしがんそのものを小さくしたり、治したりすることを、代替療法に期待しているのであれば、もう一度、考え直してみる必要があります。
これまで行われた信頼できる研究では、代替療法が、がんの縮小や治癒に関して、通常の治療(手術、抗がん薬治療、放射線治療)よりも優れた効果を上げたことはありません。
テレビ、雑誌、インターネット等では、ある代替療法の効果を、試験管内での実験や動物実験で確認しただけで、人に対しても有効的であるかのような紹介のされ方をすることもあるので、注意が必要です。
また、症状の改善が、代替療法の利用者の体験談として紹介されることもよくあります。しかし、病気や体質は人それぞれです。このような体験談があなた自身の症状にその代替療法が効果があることを示す根拠にはなりません。また、その体験談が真実のものか、創作なのかも利用者は判断できる材料がありません。

代替療法(健康食品やサプリメントを含め)を試す際の注意点
代替療法の安全性は、慎重に判断しましょう。
代替療法は、通常の医療行為や薬剤のように厳密な審査を受けないため、体に負担をかけてしまうサービスや、品質が不安定な食品も、なかには含まれています。
『天然の原料を使っている』、『昔から使われてきた』ということだけでは、安全であるとは言いきれません。
代替療法は『体にやさしい』と思われがちですが、副作用や弊害が出ることはあります。体質、健康状態、使う量によっては、かえって健康を損なうこともあるのです。
もう一つ、気をつけなければならないことは、代替療法を使うことで、標準的治療(科学的に有効性と安全性がはっきりと証明されている最新の治療)がおろそかになってしまう危険性です。
また、組み合わせによっては、代替療法が標準的治療のじゃまをすることがあるので、試す前に必ず担当医に相談することが大切です。

代替療法の費用
代替療法のなかには、かなり高額な費用がかかるものもあります。値段が高ければ、効果も高いようについ思ってしまいがちですが、必ずしもそうではありません。
代替療法の多くは、使用上の注意や分量の目安があいまいです。そのため、“使えば使うほど、効果が上がるのではないか?”と考えて、たくさんの種類、量を使ってしまい、結果的に出費がかさむこともあります。
また、代替療法を扱う業者のなかには、いたずらに不安をあおったり、強引に勧誘したりする、悪質な業者もあるようです。
代替療法の費用や契約に関して、気になること、困ったことがあれば、地域の消費生活センターや市区町村の担当窓口にお問い合わせください。

代替療法を使う前に、必ず担当医に相談する
代替療法をためす前に、担当医に必ずそのことを伝えて、意見を聞いてみてください。
健康食品の中には、抗がん薬の効果を弱めたり、薬が体から排泄されるのをじゃましたりするものもあります。また、がんの性質や、がんの治療状況によっては、代替療法によって、かえって体調が悪化することもあります。
その代替療法が、本当にあなた自身のためになるものなのかどうか、担当医にぜひ確かめてみてください。
また、代替療法を試してみたい、という気持ちに自分がどうしてなっているのか、担当医に話してみましょう。もしそれが、今受けている治療法に関する不満や不安、がんの痛み、つらさが原因であれば、担当医はあなたにとって本当によい解決方法は何か、提案してくれるはずです。
代替療法について、包み隠さず相談することは、担当医との間で、きちんと信頼関係を築いていくことにつながります。

代替療法を考えるときの目安
代替療法を考えるときには、それがどんな利益をあなたにもたらすのか、あなたにとって損になることはなにか、慎重に考えてみましょう。
その際、目安として、少なくとも以下のような代替療法は、避けた方がよいと思われます。
◎ 内容があまりにも非科学的なもの
◎ 高額なもの
◎ 副作用があるもの
◎ ほかの治療法を一切否定するもの
◎ 体力を消耗するもの

(更新日:2019年2月25日)
 

Q.再発したら、西洋医学に頼るか、代替療法でがんばるか悩んでいる。

治療を決めるとき考えること
治療の選択を検討する際、その治療による自分にとってのプラス面(その人自身にとって、あるいは病気をコントロールするうえで良いこと)だけではなく、マイナス面(副作用、危険性、合併症の可能性、日常生活や社会生活への影響のことなども含めて、その人自身のからだ、こころ、暮らしなどさまざまな側面のどこかにマイナスの影響や変化が出る可能性)も含めて考える必要があります。
また、治療は、どんながんの、どんな時期でも効果があるわけではありません。メリットが大きな治療でも、その人のがんには適応にならない場合もあります。
医師は、がんの進み具合や臓器の状態、また患者さんのからだの全体の状況などを十分考慮したうえで、可能な治療方法を説明します。大事なのは、いろいろな側面から考え、検討して、実際に治療を受ける自分自身で決めることだと思います。

代替療法を取り巻く状況
代替療法については、さまざまな意見があると思いますが、日本ではがんの代替療法の効果について、科学的な研究はされていません。なお、アメリカの国立がん研究所では、代替療法についていくつか科学的に研究を進めています。
代替療法は副作用がないと考えている方が多いのですが、副作用もありますし、必ずしも安全とはいえません。少なくとも現時点で、がんを治す効果があると科学的に証明されている代替療法はありません。
また、代替医療、健康食品等については、「統合医療」情報発信サイト(厚生労働省の事業の一つ)に、さまざまな情報が掲載されているので、参考にされるとよいと思います。
現代は、さまざまな情報が入手しやすい環境にありますが、同時にその情報の正確性は判断しにくいことも多いと思いますので、偽りの情報に惑わされないよう慎重に検討しましょう。

(更新日:2019年2月25日)