「がん体験者の悩みQ&A」では、2003年と2013年に実施した全国調査結果を整理して構築したがん体験者の悩みデータベースを公開しています。このデータベースに基づき、がん体験者の方々の悩みや負担をやわらげるための助言や日常生活上の工夫などの情報ツールの作成等を行っています。
なお、個別の回答やご相談は、仕組み上できかねますので、お困りごとやご相談がある方は、お近くの「がん相談支援センター」をご利用ください。

悩み

医療費は月6万と重くのしかかるなかで、生命保険に入れないことで、今後の不安がある。
7 件の体験者の声があります。

助言

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【がんと医療費】

がんの医療は、ずいぶん進歩してきています。その一方で、患者さんやご家族にとって、経済的負担が大きくなっているのは残念ながら事実です。

保険適用のがんの治療であっても、がん薬物療法(細胞障害性の抗がん薬、ホルモン薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など)を決められた回数や期間受けている状況、あるいはがん薬物療法を継続して受けている場合、保険診療の高額療養費制度で自己負担限度額が決められていても、毎月一定の金額が、がんの医療費としてかかり、家計全体のなかでの負担を感じることもあると思います。

民間保険に入っている、いないに関わらず、まず役に立つ公的制度を知り、特に自分が活用できる制度に関しては、相談窓口、概要を把握しておきましょう。


 
【民間保険】

現在では、がんになった後で入れる保険もあります。ただし、決め事や保険料、保証内容はいろいろです。がんの治療終了後、一定期間しないと入れないものや、保険料が割増になることもあります。
また、以前から、がん保険に入っていても、医療制度の変化の中で、現在の医療システムでは保証対象にはならないという場合もあります。
インターネットで検索する際は、<がん罹患後 保険>等で検索をかけると、保険会社のページだけではなく、どのような保険の種類があるか、メリットやデメリットなどの情報提供もあるので、参考にできます。ただし、保険会社のページでは、メリットある側面を強調しがちです。保険加入を検討している方自身も、メリットに眼が向きがちになります。けれども、保険料や保証内容、加入の条件など、十分な吟味が必要です。


 
【知っておきたい相談できる場所】

現在は、情報を探すときは、まずインターネットという方も多いかもしれません。けれども、インターネットの情報は玉石混合、正しい情報と間違った情報、新しい情報と古い情報が入り交じり、情報の「質」を見極めるのが難しいところがあります。
さらに正しい情報であっても、一般化された情報が多く、(自分の場合はどうなのだろう)ともやもやする場合もあります。この「悩みと助言」の情報も、多くは一般的な情報にとどまります。

その点、相談窓口は、あなたと相談員が情報のやりとりをするなかで、情報や問題が整理され、よりあなたの状況にそった情報を入手することができます。

1.病院の相談窓口
ご自分のかかっている病院の相談窓口を確認しておきましょう。
相談窓口については病院のパンフレットやホームページなどに案内されていることがあります。
「相談窓口」は、病院によっては、複数の場合があります。たとえば、経済的な問題や福祉制度のこと、療養中や退院後の生活のことなどは、医療ソーシャルワーカー、治療選択の迷い、病気や治療に関する悩みは看護師など、相談内容によって窓口や対応職種が異なる場合もあります。どこにいけばよいかわからないときには、「総合案内」やかかっている診療科で聞いてみましょう。

2.がん相談支援センター
全国のがん診療連携拠点病院(厚生労働省が指定)には、がん相談支援センターが設置されています。相談支援センターでは、がんの病気のことやがんの治療について知りたい、今後の療養や生活のことが心配などの質問や相談に対応しています。電話相談を行っているところもあります。
相談員は、患者さんやご家族のいろいろな不安や悩み、こころの声に耳を傾け、患者さんやご家族の問題の整理や行動するための情報提供などのお手伝いをしています。
国立がん研究センターの『がん情報サービス』のホームページ(https://ganjoho.jp/public/index.html)では、各都道府県の相談支援センターのリスト、その施設での相談支援センターの名称、問い合わせ先などの一覧表を閲覧できますので、ご参照ください。
電話相談は、相手の顔が見えないことで、緊張せずに気持ちを話せるかもしれません。

3.お住まいの市町の相談窓口
ひとり親家庭の医療費支援など、市町で実施しているいろいろな支援サービスもあります。お住まいの市町の「総合相談窓口」を確認しておくとよいでしょう。


 
【がんと診断された時、やっておくとよいこと】

1.『認定証』の申請
保険診療の医療費は年齢や収入に応じて1か月で支払う自己負担限度額が定められています。あらかじめ「限度額適用認定証(住民税非課税の方は限度額適用・標準負担額減額認定証)」の交付を受けて、医療機関の窓口で提示をすることで支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。
『認定証』の申請をせずにいったん窓口で支払いをした場合も、後日保険者に申請をして払い戻しを受けることができます。ただし、高額療養費を申請して支給されるまでには、少なくとも3ヶ月程度かかります。1ヶ月に1つの医療機関での支払いが高額になる可能性がある場合は、『認定証』をあらかじめ申請しておきましょう。
また、現在はマイナンバーカードを健康保険証として利用することができるようになりました(ただし、まだすべての医療機関や薬局で使えるわけでありませんので、注意が必要です。「マイナ受付」のステッカー・ポスターが貼ってある医療機関や薬局で使えます。)。
マイナンバーカードを健康保険証として利用することで、限度額適用認定証発行は不要になります(マイナンバーカードで限度額の適用区分が確認できます)。
マイナンバーカードを健康保険証として利用するためには、事前に健康保険証利用申し込みが必要(生涯1回のみ)になります。マイナンバーカードの健康保険証利用申込は、マイナンバーカードの保険証利用に対応している医療機関や薬局の窓口に設置してある顔認証機能付きカードリーダーで行うことができますが、待ち時間なども考えると、あらかじめ手続きしておいたほうがよいでしょう。健康保険証利用の申込みを事前に行うには、マイナンバーカードとカードリーダー機能を備えたデバイス(スマートフォン、パソコンとICカードリーダー)を用いる必要があります。

2.保険者の問い合わせ先の確認
あなたが加入している公的医療保険の保険者の問い合わせ先を確認しておきましょう。保険証には、保険者の名称や連絡先などが記載されています。
また、保険者がホームページに保険の内容や申請書様式などを公開している場合がありますので、確認しておきましょう。

3.民間保険に加入している場合に確認すること
民間保険に加入している場合は、保険証書や問い合わせ窓口などを確認しておきましょう。治療方針が決まったら、保証内容、手続き方法などを保険担当者に問いあわせをしましょう。
契約されている保険によっては、診断書が不要な簡易請求(医療機関で発行される診療明細書や治療状況報告書で請求)が可能な場合や、他の生命保険会社に提出する診断書のコピーでの対応ができる場合がありますので、保険請求手続きをする前に確認しましょう。

4.会社の就業規則や保証を確認する
会社勤めの方などは、就業規則に目を通し、休暇のこと、「傷病手当金」のことなど確認しておきましょう。

5.医療費控除の準備をしておく
本人または家族(税法では「生計を一にする親族といいます)が、1年間(1月1日~12月31日)で、10万円を超える医療費を支払った場合、申告をすれば、その医療費の額をもとに計算される金額の所得控除を受けることができます。あらかじめ医療費の領収書や保険者から送付される「医療費のおしらせ」は整理しておきましょう。
また、公共機関(電車やバス)を利用した通院にかかった交通費は、医療費控除の対象になりますが、自家用車のガソリン代、駐車場代、一般的なタクシー代などは医療費控除の対象にはならないので、ご注意ください。
その他対象になる医療費や手続き等に関しては、国税庁のホームページや静岡がんセンター作成の小冊子「医療費控除のしくみ(PDF版)」(https://www.scchr.jp/book/manabi4/manabi4-3.html)をご参照ください。

6.住宅ローンがある場合
必要に応じて、借入先の金融機関に相談できるように、担当窓口の電話番号を確認しておきましょう。
住宅金融支援機構(旧 住宅金融公庫) (https://www.jhf.go.jp/)の住宅ローンを組んでいる場合、月々の返済に困っているときに、返済方法の変更ができるようになっています。
また、住宅ローンの団体信用生命保険の契約内容も確認しておきましょう。住宅ローンの団体信用生命保険に三大疾病特約や八大疾病特約などがついていれば、その契約内容(特に「所定の状態」がどのような場合で、どのような保証内容になるのかなど)を確認すると共に、不明な点は、保険会社に問い合わせておきましょう。


 
【知っておきたい制度や情報】

日本の制度は自ら申請しないと使えない制度も多いので、支援制度や使える制度について、よく理解して有効に使い、経済的な負担が少しでも軽く済むようにしてください。

1.ひとり親家庭等医療費助成制度
母子家庭、または父子家庭などの20歳未満の児童を養育している、父、または母、養育者、児童に対し、保険給付対象となる医療費の自己負担分を助成する制度になります。所得税非課税世帯など所得制限があります。※市町村によって助成額は異なります

2.老齢基礎年金の繰り上げ支給
老齢基礎年金は、原則として65歳から受けることができますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間でも繰り上げて受けることができます。
ただ、繰り上げ支給の請求をした時点(月単位)に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わりません。
また、障害基礎年金を請求することができなくなる、寡婦年金の受給権を失う、配偶者が死亡したとき、65歳になるまでは遺族厚生(共済)年金と併給できないなどのデメリットがあります。
繰り上げ方法には、全部繰り上げと一部繰り上げがあります。
詳細は、「日本年金機構」のホームページをご参照ください。もしくはお近くの年金事務所、もしくは年金相談センターなどでご相談ください。

3.障害年金
障害年金というのは、病気やけがなどによって、日常生活や仕事などが制限されるようになった場合に、受け取ることができる年金で、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。これは身体障害者の方の年金とは異なります。ただ、受給の条件等も多く、手続きが煩雑で、申請が通っても支給までに時間がかかるなどのデメリットがあります。
詳細は、「日本年金機構」のホームページをご参照ください。もしくは、がん相談支援センター、お近くの街角の年金相談センター(日本年金機構からの委託で全国社会保険労務士連合会が運営しています)などでご相談ください。

4.生活福祉資金貸付制度
低所得世帯、高齢者世帯などで、療養費や介護費として社会福祉協議会から貸し付けを受けることができます。民生委員も相談に応じます。

5.介護保険制度
65歳以上の介護が必要な方は、市区町村に申請して認定を受けることで、さまざまな介護サービスを原則1割の自己負担で受けられます。40歳以上65歳未満の方も、特定の疾病にかかっている場合には利用できます。
詳細は、地域包括支援センターにご相談ください。

5.生活保護
使える手段をすべて活用したとしても最低限度の生活を保つことができない場合に、足りない部分を補うために、金銭や現物(医療サービスなど)が支給されます。
お住まいの市町の担当課にご相談ください。

医療費の負担が軽くなったと実感するほどには至らないかもしれませんが、少しでも負担を軽くするためにできることの情報をまとめました。
『知っておきたい相談できる場所』、『がんと診断されたとき、おこなっておくとよいこと』、『知っておきたい制度や情報』を中心にご説明します。

《参考資料》
(1)A5版サイズの小冊子『医療費のしくみ』(PDF版)
https://www.scchr.jp/book/manabi4/manabi4-4.html
(2)高額療養費制度を利用される皆様へ(厚生労働省 ホームページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
(3)マイナンバーカードの保険証利用
https://myna.go.jp/html/hokenshoriyou_top.html
(4)A5版サイズの小冊子『医療費控除のしくみ』(PDF版)
https://www.scchr.jp/book/manabi4/manabi4-3.html

(最終更新日:2023年8月10日)


 

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